シルク資源シリーズの第1巻発刊に当たりましてのご挨拶

著者:赤井 弘

日本の歴史が約2000年、この間“シルクに勝る衣料素材は無い”と云われてきた。このシルクとは、桑の葉を食べるカイコ(家蚕)が繭を作り、これを加工して生糸や絹紡糸、さらに絹織物を大量に生産できる家蚕シルクのことである。この家蚕については、古くから世界各地で飼育され、近年は品種改良が進み、大量生産に最適な素材となっている。
 一方、地球上にはシルクを産生する絹糸昆虫は極めて多数生息し、それぞれの種が家蚕に見られない利用価値に連なる特性を保有しているものが数多く知られてきた。例えば、インドネシアからインドにかけての東南アジアに広く生息する果樹害虫でもあるクリキュラの繭糸は多孔性構造であり、繊維素材として利用した場合には保湿性やUVカット機能が高く、健康シルク素材として顕著な効果をもたらす。また、マダガスカル島に見られるアゲマ・ミトレイは超太繊度で、また超多孔性の微細構造から魅力ある高価なシルク素材となるであろう。
 以上の他にも利活用により高付加価値をもたらす未利用シルク素材は、多数世界の各地に未利用の状態で放置されている。
 家蚕シルクは量産のできる勝れた衣料素材であることに変りはないが、加えて、野蚕シルクの特性を生かし、混用し、効果の高い健康シルク素材を開発し、さらに広く人類に利用されたいものである。
 “シルク資源シリーズ”の発刊に当たり、高付加価値をもたらす可能性の高いシルク資源を紹介し、多くの方々にこれからのシルク利用、特に健康シルクに関心を持って頂ければ幸いです。


定価:1,500円+消費税8%
郵送料:400円

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